第6回次世代の薬剤師を創る会(その2)

物理化学・物理薬剤学・薬物動態学・製剤学担当の横田修です。
2011年11月13日(日)Medisere大阪校にて「第6回次世代の薬剤師を創る会」が開催されました。

今回、特別講演をしてくださった大林浩幸先生の内容を紹介させていただきます。
(大林先生は、今月1日より東濃中央クリニックの院長に就任され、また東濃喘息対策委員会委員長として岐阜県内の「喘息死ゼロ作戦」推進役としてご活躍されている先生です。)


前回のつづきです。
さて、優れた吸入デバイスとは…

見ただけで患者さんがすぐ使える」――――――――

というものです。
先生がお茶で例えられていました。
「皆さんは、お茶を飲みたいときに、ペットボトルのお茶を取り、キャップを開け、お茶を飲み、飲み終わったらフタを閉めますよね。」
それぐらい見ただけで自然にできるくらい簡単なものが最も優れたデバイスだそうです。

しかし、優れたデバイスは必ずしも最良のデバイスとは限りません。
優れたデバイス≠最良のデバイス」――――――――


では、その吸入デバイスのお話です。

患者一人一人の吸入デバイス操作で、スムーズに行われずに戸惑ったり誤ったりした操作(ピットホール)を見つけ出し、その部分を意識して重点的に吸入指導を行うことで、最良の効果を得ることができます。


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では、ピットホールの例について述べます。
ここで、1つ注意点です。

今から説明するピットホール例は、吸入デバイスの欠点や欠陥ではなく、主に患者側の要因(患者の加齢現象、癖や性格、体調等)によるものです。
デバイス自身は十分な開発費用と期間をかけたものであり優れている吸入器具であることをまずご理解ください。


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患者は、この写真の吸入剤をどのように使われるでしょうか???


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正しくはこのように使います。(モデル:前田順美先生)
しかし、すべての患者さんは、医療の知識をもっていて、きちんと水平にするとは限りません。
患者さんが無能なのではありません。患者さんにとっては初めて出会う器具…
何の説明なしでこんな風に使う人がいるかもしれません。
(後ろの倉元涼先生の顔も気になりますが…)

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まさに、「医療人常識≠患者の常識」なのです。
本当に初めて使う患者への説明は、まず「キャップを開け水平に持って…」から説明を始めるべきなのです。
先生のおっしゃることに非常に共感できましたし、今までの自分の方が無能であったと感じました。

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そして、高齢者などの患者さんは若年者と違って、押す力も十分にあるとは限りません。
ジム大好き筋肉モリモリの前田先生が持っているように、高齢者の押す力は親指と小指で挟んで押したぐらいしかないのです。
私も公演中、試してみましたが…

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年に1回だんじりを曳きまわしている私でさえ、力が入らず驚きました。
高齢者の方は想像している以上に体力などが衰えています。

だからといって、治療を止める訳にはいきません。
そこで、吸入の扱い方が困難な患者さんのために様々な吸入補助器(スペーサー)があります。

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これは、デュオペーサーでシュッとすると、楕円形の中に薬がたまります。
シュッとしてから2秒後でも50%以上残っているため、シュッとした後で吸っても局所的副作用(口腔・咽頭刺激感、咳き込み)を防ぐことができますし、吸入剤として十分効果があります。

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少し小さいですが、これは容器を入れて赤いレバーを本体ごと握れば、軽い力でくすりがシュッと出てくる器具です。これを使えば、楽に吸入できます。
これらの補助器具は一部ですので、メーカーに問い合わせれば無料でいただけたりします。
学生さんは実習や薬剤師として現場に出たときに是非お試しください。


患者さんの「癖、加齢現象、個性」で吸入が成功するかどうかかかっています。
何度も述べますが、器具としての欠点はほとんどありません。
医療人は「患者さんのために患者とデバイスの『仲人』にならないといけない」とおっしゃっていました。
大林先生の著書の表紙にもありましたように、「患者さんの話をよく聞いて」「患者さんをよく見て」「患者さんとよく話して」、吸入デバイスの使用方法を的確に伝えなければなりません。
薬剤導入前に、変更後に、そして、その後も定期的に患者さんの個性や癖、加齢現象などの変化を把握しなければなりません。
仮に、使用初期にピットホールがあった吸入デバイスでも患者がそれを意識するように吸入指導し、その後正しくスムーズな吸入が行われるようになれば、その患者の最良のデバイス候補になり得ます。
医療者は、ただ薬剤を処方するのではなく、ただ調剤するのではなく、吸入デバイスと患者との相性も考え、その後の継続的な吸入指導を行い、患者にとって最良のデバイスとの出会いを手助けする必要があります。
現役薬剤師の先生方でも実習の学生さんでも現場に出たとき、不自由に感じたものがあればどんどん発信すべきと思います。
ふとしたきっかけで、それが後々大きな発見、患者さんにとって大きな手助けになる可能性があります。
皆さんも本当の「親身」になって患者さんのことについて考えてみてはどうでしょう?
思わぬ「ピットホール」を発見できるかもしれませんね。
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by Medisere | 2011-11-18 19:31


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